ASEANロングステイに朗報! 経済動向にみる「暮らし」の未来図

2019年6月29日、日本初開催となる主要20ヵ国・地域首脳会議(G20大阪サミット) が閉幕しました。
安倍首相の隣で米国・トランプ大統領、中国・習国家主席らが肩を並べる様子がメディアで連日報道されていましたが、貿易という観点で米国、中国の溝は深まるばかりです。
これを受けて、中国は投資の対象をASEAN諸国に向けており特にテクノロジー投資はここ数年で急激な増加を見せています。
このような世界的な情勢ひいてはASEAN経済動向はロングステイをする方々の暮らしに大きな影響を与えます。
この記事ではこのような最新ニュースを取り上げながら、今後のASEAN諸国の生活の変化の可能性についてお届けします。

「米中貿易摩擦」で増えるASEAN製品需要

日本貿易振興機構(JETRO)のビジネス短信によると、2019年第1四半期(1~3月)の中国から米国への輸出は前年同期比8.8%減となったといいます。
主にスマートフォン(HSコード:851712)や機械部品・付属品(847330)など、電子機器や機械類の減少幅が大きくなりました。
その代わりに、スマートフォンや機械部品・付属品においては米国はベトナム、台湾、韓国、日本からの輸入を増やしている現状です。
また、履物や腰掛(アップホルスター)などに関しては米国はマレーシア、ミャンマー、カンボジアなど、ベトナム以外のASEAN諸国からの輸入を増やしているとのことです。

今後米国は、対中輸入額3,000億ドル相当の3,805品目に最大25%の追加関税を賦課するといわれています。
この結果、スマートフォン、パソコン、デジカメなどの電子機器に加え、玩具、靴、衣類などの多くがASEAN地域からの輸入増につながる可能性が出てきています。

このように米国の製造品、消費財輸入の中国の代替地となっているASEAN諸国は、今後経済活性化が急速に勢いづく流れがあるのです。

中国がASEANテック投資を加速!「スマートシティ」の背中を押す?

このような米国の貿易政策に対し、中国は投資の対象をASEANに向けています。
HSBCシンガポール CEO トニー・クリップス(Tony Cripps)氏のレポートによると、中国は近年東南アジアに対し、特に「テクノロジー分野」へ投資を急激に増やしているとのことです。
具体的には東南アジアへ進出しているアリババ、テンセント、JDドットコムといった中国のテクノロジー大手による投資が目立つといいます。

ASEAN諸国の都市人口の増加、中間層の増加、そして前述の米国向け製造品、消費財の輸出増は東南アジアをますます魅力的な市場に育て、中国からの投資増を招いているという構図になっているのです。

海外からASEANへの直接投資(国別)

出所:ASEAN Stats Data Portal

このような中国によるテクノロジー投資増はASEAN諸国の都市化やスマートシティ構想を後押しするものになるとも考えられています。

2018年11月26日の日本貿易振興機構(JETRO)ビジネス短信では、シンガポールで開催された第33回ASEAN首脳会議で「ASEANスマートシティ・ネットワーク」(ASCN)構想を採択したことを発表しています。
これはシンガポール、ベトナム、インドネシアをはじめとするASEAN域内26都市が参画しているもので、2019年にはカンボジアのプノンペン、バッタンバン、シェムリアップの3都市が選出されたことでも話題を呼びました。
このスマートシティプロジェクトでは、

  1. 観光や行政サービスも含む文化の多様性と社会調和の強化
  2. 教育や医療、住宅など市民の生活改善
  3. 食料資源の確保や安全、治安の維持
  4. 持続可能な環境と災害対策
  5. エネルギーや上下水道、交通などスマートな技術を活用したインフラ開発
  6. 最新技術を活用した労働生産性向上と競争力強化

の少なくとも1つが盛り込まれるべきとされています。

ASEANスマートシティ・ネットワーク (ASCN)概要

出所:産業競争力懇親会 デジタルスマートシティの構想(2019年2月)

2030 年までにASEAN都市圏の人口は 9,000 万人増加すると予想され、20 万~200 万人の人口を抱える中堅都市が地域の成長の 4 割に貢献するといわれています。
一方、このような大きな変化は、混雑や貧困、所得格差、治安にまで影響すると考えられています。
そこで、スマートシティ・ネットワークで掲げられているような「テクノロジー活用」がされることが大いに期待されているのです。

スマートシティの実現のためのテクノロジーは日進月歩で進んでいます。

例えば、5G通信のようなWi-fiネットワークの高速化をはじめとしてセンサーやケーブルの薄型化による小型・高機能化、そして低価格化により、データ活用やIoT適用が世界の多くの都市で始まっています。

欧州の一例になりますが、Cisco社といち早く取り組みをはじめたスペイン・バルセロナは行政サービス、街路灯管理、公共施設のエネルギー 管理、交通、雨水再利用、スマートパーキングなど Wi-Fiを基盤としたスマートサービスを受けられる世界屈指のスマートシティです。
センサーを使ってごみの量、腐敗率などまでデータ化して効率的なごみ処理収集を行う取り組みも進んでいます。

ASEAN諸国のスマートシティ改革はまだはじまったばかりですが、テクノロジー大国である中国の投資、人材そして画期的なアイディアが入り込む、大きな期待に満ちた地域であることに間違いありません。

ロングステイの候補地として勢いに乗るASEANを選ぶことで、もしかすると日本で生活するよりもはやく最新テクノロジー・サービスを享受できるようになるかもしれません。

ロングステイの魅力は、海外都市の変化と成長を間近で感じることができる点です。
ASEAN諸国で暮らす際は、暮らしを変える経済動向やテクノロジートレンドにも注目してみてください。