大きく異なる日本とマレーシアでは相続手続方法
日本の遺産相続の場合、遺言書があれば遺言書に沿って分配され、無い場合は遺産分割協議書を作成して分配の手続きを取る流れになりますので、裁判所は関与しません。
しかし、マレーシアの遺産相続法では、マレーシア国内に残された遺産は相続人が申し出て高等裁判所の手続きを行い、【Letter of Administration】という書類を得たのちに分配されるという仕組みになっています。
この申請にはいくつもの役所へ手続きを行う必要があり、外国人(特にマレーシア国外に住む相続人)が手続きを行う場合は非常に困難な事が多く、裁判所の手続きが完結するには数年の時間を要する事があります。
また、遺産金額によっては個人での申請手続きが不可能であるがために、別途弁護士費用がかかる事もあります。
加えて、銀行預金と不動産等では申請する役所が異なるなど、それぞれで手続きが必要となり、更に時間と労力がかかる事になります。
銀行口座に関しては、口座名義人の死亡が銀行側で認知した時点で口座凍結されますので、預金引き出しやローン返済に使えなくなります。
分配率に関しても、日本の法律と異なり、【配偶者25%】【両親25%】【子供50%】と既に法律で定められており、多くの点で日本とマレーシアの相続継承の仕組みは異なります。
遺言書がある場合・無い場合の違い
マレーシアでは金融機関等が死亡を把握した時点で銀行口座等は全ての手続きが行う事が出来ない状態「凍結」になってしまいます。
凍結された口座内の資金の相続を受けるためには以下の手続きが必要と成ります。
(遺言書が無い場合)
- 役所・弁護士・裁判所への手続き代表者と成る人物を全受益者(相続人)の合意の元に選定する。
- 資産の確定の実施
- 2つ以上の資産証明書の提出
- 弁護士への手続き依頼 (一般的な弁護士依頼費用は最低RM5000~)
- 裁判所の許可発行
簡単に言うと上記の手続きが必要と成り、1年程度の時間が掛かってしまします。
遺言書が有る場合
- 遺言執行者任命(通常は遺言書を作成したAMANAH RAYAなどの遺言事務所が行う)
- 遺言の兼任作業実施
- 資産分配実行
と、遺言書を作成している場合は資産が分配されるまでの時間が大幅に短縮できる上に、遺言書事務所が全ての手続き代行を行うため、相続完了までの時間・手間が大幅に軽減されます。
(ライター・中村 直輝 by STEP1Malaysia.com)