2024年12月。日本酒や焼酎、泡盛といった日本の「伝統的酒造り」と同時期に世界の三大スープとも言われるタイの定番料理、海老入りの酸っぱくて辛いスープ「トムヤムクン」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。
「トムヤムクン」はタイでは5件目のユネスコ無形文化遺産となり、「コーン(タイ伝統舞踊劇)」、「タイマッサージ」、「ノーラ(南部タイの舞踊劇)」、「ソンクラン祭り」に続くことになります。
地域で異なるトムヤムクン
トムヤムクンは、海老などでだしをとり、ハーブや唐辛子で味付けしたもので、辛くて酸っぱい独特の風味が特徴ですが地域によって味も異なります。
世界遺産の登録の説明書類を見ると「タイ中部の川沿いの地域が発祥」とされており、タイ首相府は「自然との調和を重んじる人々の深い理解を反映したヘルシーな料理」と定義しています。
これだけ世界的に有名な「トムヤムクン」ですが起源については実際は良くわかりませんでしたが、現代風の「トムヤムクン」が一般的になったのは1964年頃の様です。※諸説あり現在のバンコクでは殆どのお店がナムコン(濁ったスープ)を採用していますが、ナムサイ(クリアスープ)もあります。筆者の認識ではイサーン(東北部)ではナムサイ(クリアスープ)が好まれ中央部以南ではナムコン(濁ったスープ)が多い気がします。タイ人以外はほとんどの方がナムコン(濁ったスープ)を好んでいると思います。
ちなみに日本にあるタイ料理店で食べられるトムヤムクンもほとんどがこのナムコン(濁ったスープ)で日本人にとって馴染みのあるトムヤムクンだと思います。
そして具であるエビですが、もともとは川海老を使うのが一般的でしたが今は海の海老を使っているお店が多い印象です。川海老の値段が高いからではないでしょうか。
筆者の個人的な好みとしては、ココナッツミルクやエバミルクを入れ濃厚にしているナムコンスープ(濁ったスープ)に川海老を使い海老のコクがたっぷりのトムヤムクン・ナムコンに追加でイカを入れるのが好きです。貝や魚を入れたトムヤムタレー(海鮮トムヤム)とは異なりますのでぜひ挑戦してみてください。
スーパーでわかるタイ人のトムヤムクン愛
現在、筆者がバンコクで「トムヤムクン」の表示を最も見るのはレストランでなくスーパーの袋麺とカップ麺売り場です。複数のブランドの様々な種類が販売されています。
これを見ればいかに「トムヤムクン」がタイ人に愛されているかが理解できます。
特に ママー(มาม่า)ブランドの袋麺は大人気で嫌いな人はいないのでは無いか?と思われます。
タイの即席麺は1971年に現在では味の素とジョイントベンチャー(JV)を締結しているヤムヤム(ยำยำ) が最初に発売しました。
もともと台湾で貿易商を営んでいた創業者が「タイでも即席麺を製造しよう」と、日本から即席麺を製造する機械を購入して生産を始めたことが起源となります。 この2社の即席麺は、今ではタイ人のみならずタイ土産の定番商品としても人気があります。
広がる進化系トムヤムクン料理
今ではトムヤムクン味の料理や商品も数多く出回っています。皆さんが良く目にするもので言えばトムヤムクン味のポテトチップスに代表されるスナック菓子。意外に日本にあるタイ料理店で一般的なトムヤムクンチャーハンや、トムヤムクンラーメンですが、これも進化系トムヤンクン料理。今ではタイでも提供しているお店を見かけることはあります。
進化系トムヤンクン料理で、中でも意外性があり、絶妙な美味しさだったのは「トムヤムクンピザ」。ちょっと頼むのに勇気がいりましたが、トムヤムクンの持つ酸味とクリスピータイプのピザ生地、そしてチーズとの相性はばっちりでした。日本で言う照り焼きチキンピザのような立ち位置でしょうか。
このように世界中の人から愛されるトムヤムクンだからこそ、様々な国・地域の料理との融合でさらなる進化を遂げ、新しい発見と感動をもたらしてくれるのではないでしょうか。
いかがでしたか?筆者はタイの「トムヤムクン」と日本の「伝統的酒造り」が同時に世界遺産に登録されたことからトムヤムクンとマリアージュする日本酒をぜひとも見つけたいと思っています。それは、欧米の方がワインを一緒に飲んでいるのを見て日本酒にも合うのではないか?と考えたからです。皆さんが試して相性の良い日本酒があれば教えてくださいね!
トムヤムスープに入っている具材をどこまでたべればいいかわからない人は、こちらの記事も参考にして見てください。
(ライター・中島克久/登録ロングステイアドバイザー)